アルバム『パレード』のリリースにあわせて、1986年3月から地元ミネアポリスを皮切りに「Hit N Run Show」と銘打ったUSツアーが行われます。このツアーはアメリカ国内では8月まで月平均2回程度のショウと断続的なものでしたが、続く8月から行われたヨーロッパツアーは8月12〜31日まで7カ国をまわり、計18回(イギリスでは一日2回のショウを行った日が2日ある)という常識では考えられないツアーでした(さらに9月5日からは大阪を皮切りに日本ツアーが行われている)。ウェンディ&リサら、レヴォリューションが同行した最後のツアーで、ウェンディの双子の妹スザンナもバック・コーラスでツアーに参加していました。
このツアーの公演はいずれも素晴らしい演奏ですが、なかでも8月25日に行われたパリ公演は音質・演奏とも実に素晴らしい内容です。『HEAD』(bambi 001/2)はサウンドボード録音ですが、アンコールの4曲が収録されていません。この日演奏された4曲のアンコール曲のうち、「It's Gonna be a Beautiful Night」はオーヴァーダブが施されて、『サイン・オブ・ザ・タイムス』に収録されたテイクで、ここはぜひ耳にしておきたいところ。これらアンコールの4曲は『R U Ready Paris?』(Rocks 92074/92075)に収録されています。『HEAD』は高音質のサウンドボードで、『R U Ready Paris?』(インナーの日付は8月18日となっていますが、これは誤りで25日が正しい)はオーディエンスながら臨場感あふれる音質です。聞き比べるのも一興。
この日の演奏曲 1. Around The World In A Day 2. Christopher Tracy's Parade 3. New Position 4. I Wonder U 5. Raspberry Beret 6. Delirious 7. Controversy 8. A Love Bizarre 9. Do Me, Baby 10. How Much Is That Dog In The Window? 11. Automatic 12. D.M.S.R. 13. When Doves Cry 14. Under The Cherry Moon 15. Anotherloverholenyohead 16. 17Days 17. Head 18. Pop Life 19. Girls & Boys 20. Life Can be so Nice 21. 1999 22. It's Gonna be a Beautiful Night 23. Mountains 24. Kiss 25. Purple Rain
奇才トーマス・ドルビー唯一の全米トップ10ヒット。原題は「She blinded With Me Science」です。83年に5位まで上がりましたが、本国イギリスでは49位と今ひとつでした。なんとも不思議なことです。当時最新のテクノロジーを駆使したエキセントリックなテクノ・ポップ(共同プロデューサーとして、TALK TALKのティム・フリーズ・グリーンがクレジットされています)で、「サイエンス!」という掛け声は、92年に亡くなった英国の科学者・TVプレゼンター、マグヌス・パイクの声のサンプリングです。この曲と次の「ハイパーアクティヴ!」で、マッド・サイエンティストというイメージ(映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー』でクリストファー・ロイドが演じた、エメット・ブラウン博士=ドクみたいな人)が定着したトーマス・ドルビーですが、マグヌス・パイクの従兄弟であるジェフリー・パイクは、元祖マッド・サイエンティストとして有名です。なお曲中に出てくる言葉「Good heavens, Miss Sakamoto! You're beautiful!」の「ミス・サカモト」とは、アルバム『The Golden Age of Wireless』(82年)に参加していた矢野顕子(レコーディング中の81年には、坂本龍一と事実上婚姻関係にあった)のことだと言われています。
トーマス・ドルビーは、本名トーマス・モーガン・ロバートソンといい、「ドルビー」は学生時代からのニックネームで、音響システムで有名なドルビー研究所がその由来だそうです。80年代を代表するテクノ職人で、バグルス「ラジオ・スターの悲劇」の共作者、ブルース・ウーリー(『The Golden Age of Wireless』にも参加)のカメラ・クラブを皮切りに、トンプソン・ツインズ、フォリナー、デフ・レパード、スティーヴィー・ワンダー、ハービー・ハンコックなどさまざまなセッションやツアーでその技を披露しています。あえて目立とうとしないところが彼のカッコいいところで、85年のライヴ・エイドでデヴッド・ボウイのバックでキーボードを弾いていたのがトーマス・ドルビーだった、というのは有名な話。またXTCとの交流もあり、バリー・アンドリュースの後任として名前があがったり(結局実現しなかった)、ツアーを嫌がるアンディ・パートリッジの代役としてトーマス・ドルビーでXTCのツアーを行おうという話もあがったことがあります(これも実現しなかった)。『The Golden Age of Wireless』には、アンディ・パートリッジも参加しています。またプロデューサーとしてもその手腕も高く評価され、なかでもジョニ・ミッチェルの『ドッグ・イート・ドッグ』やプリファブ・スプラウトの『スティーヴ・マックイーン』は素晴らしい作品です。
ドイツの3人組アルファヴィル(Alphaville)のデビュー曲で、本国(西)ドイツでは5週にわたって1位を独走したほか、84年に全英で8位を記録しました。ドイツのエレ・ポップというと、ヒューバート・カーやピーター・シリングが思い出されますが、このアルファヴィルはヨーロッパ的な雰囲気を感じさせる哀愁エレ・ポップです。かつて「BIG IN JAPAN」いうリヴァプールの伝説的なバンドがあり、「BIG IN JAPAN 日本じゃ大物」=「三流」という意味だそうですが、この曲では「big in japan where the eastern seas so blue」という歌詞を読む限り、「ターニング・ジャパニーズ」のような「国辱ソング」とはちがって悪い意味はないようです。
2枚のアルバムを残して解散したファイン・ヤング・カニバルズ(Fine Young Cannibals)の、衝撃のデビューシングル(85年)。本国イギリスでは最高位8位を記録しています。特筆すべきはヴォーカルの特異さ。ソウルフルで高低自在、哀感あふれる特徴ある声、さらにVの字に切れ込んだヘアスタイルがインパクト強い独特の風貌....と数え上げればきりがないほど。この曲ではトランペットも印象的です。